目の前の見えないものを見る

表面に現れていることに、そこにも真実はあるけれど
奥底にはもっと深い真実があったりする。

自分が放つ言葉は、自分が思った意味とは違う響きになって相手に届くことがある。
取り手が違えて受け取ったとしても、それは紛れもない私の言葉。
そうじゃないと解説しても、伝わり咀嚼された時点で、私のものではなくなる。

例えば、高齢の母が、腰が痛いと毎日困った顔をする。
そうかぁ~庭仕事で重い鉢を持ったからね。
【私が手伝うから、やっちゃダメよ。】そんな言葉を投げかける。
私としては、労りと無理をさせたくない思いがあり、少し口調が強くなった。

数時間後に母は怒った口調で
「何故 貴女は私の楽しみの庭いじりをするなと禁じるのか!」と訴える。
中核症状が見受けられる母なので、
身体の痛みと不安が入り乱れて、その果てに私の言葉の【ダメよ】の部分だけが強調されたのだと思う。

そうじゃないと説明しても、反発だけが残り、こちらがそれを肯定しても、理解が出来ず苛々したままが続く、
「言いたいこと全部言ってよ。」と、ちぐはぐでも思っていることを話してもらった。
言い争っているうちに、心の中のザラザラしたものを言い切ったのか、「言いたいことを言ったら、スッキリした。何を言ったのか忘れたけど」って。

翌朝、そんな言い争いがあったこともみじんも感じさせない普通通りの母。
でも夕刻、「夕べ、貴女と喧嘩したような・・・あれ、夢だったのかな?言っちゃいけないことも言ったような気がする」と訊ねてきた。

「夢じゃないよ」とにこやかに答える私。
「すごい剣幕で怒ってた。寒い中、聞かされてね、思ったことを話したらスッキリしたって部屋に戻ったよ。痛みや将来への不安があるから、何かぶつけたかったんじゃないのかな?言われた私はキョトンとしたけど、吐き出したらスッキリしたみたいだから、これからも何でも聞くから遠慮なくね。」
そう話すと、母も「うん。不安だらけ!! これから こういうことが増えると思う。遠慮なく言うわ。」

同居し始めた時から、攻撃的な母の投げかけがあり、私は精神的に疲れたものだったが、
こちらからの思惑とは異なる切り取られた言葉に、何かのスイッチが入り、逆鱗に触れる。

目に見えるものは【母の暴言】であっても、目に見えないものは【誰かにぶつけたい、重い気持ちを預けたい】そういうことなんじゃないかと、私の中で腑に落ちて。。

目に見えるものの意味よりも、その向こう側に隠れている【本意】や【真意】のようなものを透かして見ようとする気持ちを持つこと。そうすると、暴言も【アラーム音】として捉えることが出来る。

不満や不安を全部、吸い取ったり拭い去ることは出来ないし、私とて非力な人間なので、耐えられなくなり逃げたり目を背けたりする。だけど、取り敢えず、最後まで聞き入れることで、何かを感じられる気がした。
その何かは、ぼんやりとしか見えない。今のところ・・・正体は何でも構わない。。
【アラーム音】を聞き入れられる練習を続けるだけね。

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